中古マンションを高く売るために
マンション売却の「査定」は売却金額だけでなく、不動産会社選びにも関係する大切な手続きです。
ただ、不動産の査定は一般の方では分かりにくいことも多いです。
- なぜ不動産会社やサイトによって査定価格が違うの?
- 査定金額ってどこまで信用できるの?
- 査定金額を上げる方法はある?
できるだけ高く売るうえでも査定金額は大切ですが、一方で不動産会社やサイトの意向で決まっている部分もあります。
この記事では、マンションを高く売却するための「査定」について解説します。
- マンションの査定方法
- 不動産会社によって査定価格が違う理由
- マンション訪問査定前に準備すること
- マンション査定ではどこをみるか
- 査定価格と売却価格は違う?
マンションの査定方法
マンションの査定方法には、大きく簡易査定と訪問査定があります。
匿名でもできる机上査定(簡易査定)
机上査定は、所在地や専有面積、築年数などの基本的な物件情報から査定金額を算出する方法です。(簡易査定ともいいます)
同じあるいは類似のマンションの過去取引事例との比較し、不動産市場の動向などを加味して算出します。
ネット上で、個人情報等の入力が必要なく査定が行える「AI査定」「マンション査定シミュレーション」も机上査定の1つといえます。
ただ、サイト上の机上査定でも、扱うデータや市場動向の考え方、営業方針などで査定金額は違ってきます。
サイト運営者からすると、簡易査定は集客ツールでもあります。
訪問査定
訪問査定は、机上査定の結果に加え、それぞれの物件の個別事情を反映させた査定金額を算出する方法です。
物件の基本情報データでは分からない、室内のコンディションや管理状況、周辺環境などを現地で確認し、査定金額に反映させます。
机上査定と比べ、より市場価格に近い、精度の高い査定金額を知ることができます。
ただし、訪問査定でも不動産会社によって査定金額に違いが出ます。
机上査定と訪問査定の目的が違う
机上査定と訪問査定では、目的が違います。
- 売却収入の目安を知る
- 売却するか否かを判断する
- マンションの市場価値を知る
売却するために市場価格を知り、売り出し価格を決める資料とする
ですので、査定結果をもとに不動産会社を決めるにしても、机上査定の結果で判断するのは良くありません。
不動産鑑定士による査定(相続不動産など)
不動産会社やネットで行う訪問査定、机上査定以外に不動産の価格を知る方法として、不動産鑑定士に依頼する方法があります。
不動産鑑定は、主に銀行や裁判所、税務署などに対して、適正な価格での取引であることを証明するために活用されます。
相続した土地や建物を分割する際に、複数の相続人が不動産の財産的価値でもめないように利用されることもあります。
売却することが前提の不動産会社の査定と比べ、費用はかかりますが、より客観的な価格が分かります。
不動産会社によって査定価格が違う理由
複数の不動産会社に訪問査定を依頼したとき、「査定結果が違う」ことはよくあります。
「査定金額が一番高い会社に依頼したい」という気持ちは分かりますが、査定金額に違いが出る理由を知ったうえで対応することが大切です。
- 比較する事例が違う
- プラス・マイナスの評価の仕方が違う
- 不動産会社の営業方針が違う
比較する事例が違う
不動産の査定方法をお伝えしましたが、その査定の根拠となる不動産の評価方法として、マンション、一戸建て、投資用不動産等の種類に応じて3つの方法がありますので簡単に解説します。
不動産の3つの評価方法
- 原価法
- 取引事例比較法
- 収益還元法
原価法は主に一戸建ての評価に用いられる方法です。
売却しようとする物件を改めて新築する価格(再調達価格)から築年による減価償却分を差し引いて建物の価格を算出する方法です。
ちなみに、土地は減価償却しない資産として扱われます。
取引事例比較法は、主にマンションや土地に活用されます。
売却しようとする物件の周辺地域で条件が近い複数の取引事例と比較し、そこから個々の個別事情を調整して価格を算出する方法です。
収益還元法は、主に投資用マンションなど収益物件に活用されます。
1年間の純利益(家賃収入から管理費や固定資産税等の諸経費を差し引いたもの)と還元利回り(1年間で得たい利益想定)で算出します。
マンションの査定で用いられる取引事例比較法
マンションの査定で用いられる取引事例比較法ですが、比較する対象物件であったり、物件数、どの時点までさかのぼって比較するかなどの違いが不動産会社や担当者によって違うことがあります。
特に、直近の比較事例が多ければ近い評価になりやすいですが、少ない場合は価格に違いが出やすくなり、査定金額の違いにあらわれます。
プラス・マイナスの評価の仕方が違う
中古マンションは1つとして同じものはありません。
立地条件が近いマンションと比較する場合、駅からの距離が同じでも、物件によってさまざまな面で評価が異なります。
- 周辺環境
- 店舗までの距離
- 公共施設の利便性
- 所在階、角部屋か中住戸かなど
- バルコニー向き・日照・通風
- 室内の維持管理状況
- 外からの騒音や振動
- 眺望・景観
- バリアフリー対応
- 修繕積立金や管理費の負担
- 管理員の勤務形態や保守管理
- 土地権利(所有権か借地権かなど)
- 耐震性や省エネ性能、評価書の有無
- セキュリティやネット等通信、放送設備
- 住戸内やマンション内での事件、事故
- リフォームや修繕履歴
これらが査定金額にどこまで影響するかは、査定する人、会社、システムによって異なりますので、結果的に査定金額に違いが出ます。
不動産会社の営業方針
不動産会社や担当者の営業方針によって査定金額は変わります。
- 相場より大幅に高い査定金額
- 相場よりやや高い査定金額
- 相場通りの査定金額
- 相場より低い査定金額
マンション売却で一番気になるの査定価格。
ですが、一般の売主が査定金額の信頼性を確認するのは簡単ではありません。
不動産会社は、売却依頼をもらうために営業活動の一部として査定を行います。
売主としては査定金額が高い会社に依頼したくなるのは当然ですし、不動産会社もそれに応えようと市場価格より高い査定価格を提示します。
ですので、不動産会社の営業方針によって査定価格は違ってきます。
マンションの訪問査定前に準備すること
ではマンションの訪問査定にきてもらうとなった場合、どういった準備をしておくべきでしょうか。
マンション査定前の最低限の掃除
室内や水回り、バルコニーなど最低限の掃除はしておきましょう。水回りのカビや臭いなどの確認も大切です。
室内の維持管理状況も査定金額に影響しますし、不動産会社が広告や内覧を行うにあたり査定時の室内のイメージは大切です。
できれば収納スペースも収納量が分かる程度に片付けられるとよいでしょう。
マンションの収納スペースは内覧時の購入判断にも影響します
物件資料や修繕履歴を準備
査定の前に物件に関する資料を準備しましょう。
- 登記済証(登記識別情報)
- 登記簿謄本
- 間取り図
- 新築時のパンフレット
- 購入時の売買契約書・重要事項説明
- 住宅性能評価書等
- 固定資産税納税通知書
- 管理規約や維持管理に関するもの
- リフォーム・修繕履歴
- 住宅ローン残高証明書
査定に必要なもの、金額に影響するものは不動産会社で判断しますが、物件に関する資料はできるかぎり準備するようにしましょう。
不具合箇所やアピールポイントを整理
不具合箇所があれば伝えられるように整理しておきましょう。
不具合箇所は査定金額に影響するだけでなく、のちのち売買契約上の契約不適合責任にも関係する可能性があります。
契約不適合責任
あらかじめ取り決めた種類や品質、数量に関して、契約内容に適合しない引き渡しをおこなった場合に、売主側が負担する責任
- フローリング等のきしみ・床なり
- 雨漏れ跡や被害がある(あった)
- 冬場の結露がひどい、カビがある
- 給排水の流れが悪い
- スイッチや電気系統の不具合
- 水回りの水漏れ箇所がある(あった)
- ドアや窓の開閉に支障がある
- 共用廊下や外壁に大きなひびがある
- 漏水がある(あった)
- 管理組合で抱えている問題
一方アピールポイントがある場合も整理しておくとよいでしょう。
- 複数駅のアクセスがしやすい
- 小中学校の評判、アクセスの良さ
- 入居者層(ファミリー層が多いなど)
- 買い物施設が複数
- 線路近くだが音が気にならない
- 新築時に備え付けの家具等のオプション
- 日当たり、洗濯物の乾きがよい
- 眺望の良さ
- 生活動線の良さ
- 収納率の高さ
- デッドスペースの少なさ(有効面積が多い)
- 既存住宅売買瑕疵保険付き(保険付保の場合)
- 耐震等級や断熱性能(住宅性能評価書等)
- リフォームや設備の更新履歴
- 大規模修繕工事の終了(間もない)
マンション査定ではどこをみるか
マンションの査定ではどこをみられるのでしょうか。
物件資料からわかる基本的なデータや伝えるべき不具合箇所などを除き、査定時にみられる点と理由についてまとめました。
マンションの売却理由
売却理由や売却にかけられる期間も査定時の重要なポイントです。
特に、ネガティブな理由(離婚やローン返済困難など)や売却期限が決まっている場合などは、どこまで買主に伝えるかは別として、不動産会社の査定時に伝えておく必要があります。
それによって、広告や販売方法に影響を与える可能性もあります。
室内の状況、部屋の使われ方
築年数に応じて経年劣化や汚れはありますが、それがどの程度なのか、部屋の使われ方などは買主目線でみられます。
リフォームが必要か否か、ハウスクリーニングでいけるかなど、内覧時には購入検討者も気にしながらみるはずですので、そういった質問に対応できるためにも確認します。
室内の状況は、査定金額だけでなく売れやすさにも影響します。
日当たり
実際の日当たりも査定時の確認ポイントです。
南向きバルコニーでも、近隣の建物によって日当たりや眺望に違いがあります。
東向きや西向きバルコニーとなると、買主も日当たりや洗濯の乾きなど気にしながら内覧するはずですので、対応を準備する必要があります。
音の問題
マンション管理組合の居住者間のトラブルでもっとも多いものが音に関するものです。(平成30年マンション総合調査)
- 前面道路、鉄道の騒音
- 公園や隣接する施設の音
- 窓の開閉時による違い
- 時間帯による違い
平成30年マンション総合調査(国土交通省)
間取り・設備の変更
新築時から間取りが変更となっている場合、現在の間取りに合わせた図面を作成する必要があります。
また、オール電化からガスなど設備を変更している、給湯器などの交換などは設備の耐用年数を把握するためにも確認されます。
収納スペース
一戸建て以上にマンションの収納スペースは、購入者にとって重要事項です。
ですので、内覧時の対応のためにも、広さや使い勝手など確認されます。
また、北側に位置する部屋の収納は、冬場結露による染みやカビが発生しやすいこともあり、内覧時に判明したとならないためにも確認が必要です。
管理状況
一見して管理が行き届いていないマンションは売れにくく、査定金額にも影響します。
ですので、マンション内のエントランスだけでなく、ゴミステーションや駐車場、駐輪場の清掃や整頓状況など、管理が行き届いているかを確認します。
共用施設・設備
マンションの共用施設や設備を確認します。
特に、監視カメラやオートロック、防犯システムの有無等、セキュリティ対策は、マンションよって設備や対応状況が異なり確認ポイントとなります。
また、エレベーターの設置台数や待ち時間、駐車場タイプ(自走式や機械式かなど)も確認ポイントとなります。
周辺環境や最寄り駅からの経路
マンションの周辺環境は、査定時の大切な確認ポイントです。
隣接の施設(商業施設や工場であれば生活に影響があるか否か)、スーパーや公園、郵便局までの時間や充実度など、物件のデータでは分からない点を確認します。
最寄り駅からの経路、坂道や信号の数、実際にかかる時間なども、内覧時に聞かれることも多く確認事項となります。
住宅ローン残高
住宅ローンを返済中であれば残高の確認が必要となります。
売却収入で住宅ローンが完済できる見通し(査定金額)であるかを知り、それによって、自己資金の準備や場合によっては任意売却などの方法も検討する必要があります。
マンション査定価格と売却価格は違う?
査定金額と売却金額は同じになることは少ない。
本来、マンションの査定は市場価値(相場)を知るために行うものです。
ただ、査定のしかたの違い、不動産会社の意向によって金額が異なることも珍しくありません。
特に、一括査定をはじめ複数の不動産会社の依頼する場合、競争原理が働くため、本来の市場価格とはかけはなれた査定結果も出やすいこともあります。
- 査定金額
- 売り出し価格
査定金額や相場、市場動向、競合物件、売主の意向を考慮しながら決定。
- 売却価格(成約価格)
販売状況によって価格変更や値下げ交渉などもありながら決まる
ですので、「査定金額が高い=売却価格が高い」というわけでもありません。
大切なことは、
査定金額だけでなく、売り出し価格の設定、販売方法、担当者の信頼性をセットで考えることです。
最終的な目的は、できるだけ高い金額で確実に売却することです。
そこに到達するまでの過程が信頼できるものであることが重要です。
まとめ
ここまでマンションの査定方法や査定金額に影響するポイントについて解説しました。
マンション売却の最初のステップである「査定」は、最終的な売却金額だけでなく、不動産会社選びにも関係する重要な手続きです。
- 机上査定(簡易査定)
- 訪問査定
- 不動産鑑定士による査定
- 比較する事例が違う
- プラス・マイナスの評価の仕方が違う
- 不動産会社の営業方針が違う
- 最低限の掃除
- 物件資料や修繕履歴を準備
- 不具合箇所やアピールポイントを整理
- 売却理由
- 室内の状況、部屋の使われ方
- 日当たり
- 音
- 間取り・設備の変更
- 収納スペース
- 管理状況
- 共用施設・設備
- 周辺環境や最寄り駅からの経路
- 住宅ローン残高
是非参考にしてください。