はじめに
親が住まなくなったマンションを売却したいんだけど、何から始めればいいの?
できるだけ高く売りたいけど何に気をつければいいの?
マンションを売却するといっても初めての人も多く、不動産取引についてよくわからないという方がほとんどだと思います。
基本的には不動産会社を決めてあとは任せればいいんでしょ?
確かにそういう売主さんもいらっしゃいます。
ただ、高く売却する、期限内に売却するなどの希望をかなえるためにも任せっきりはよくありません。
売主として準備すること、売却が完了するまでの流れをしっかりと知っておくことが必要です。
この記事では、売主の方の視点で中古マンション売却の流れを解説します。
- マンション売却がどのようにすすむか
- それぞれの手続きにどういう意味があるか
- 価格や売却しやすさになにが影響するか
できるだけ高く売りたい、失敗したくないという人は是非参考にしてください。
中古マンション売却の10ステップ
マンション売却の流れ
中古マンション売却の期間
中古マンションを売却する流れは、大きく3つに分けることができます。
販売活動開始までの準備
販売活動から購入申込
売買契約から引渡し、確定申告
売却を決めてマンションを引渡すまでの期間は、最低でも5カ月程度は考えておく必要があります。
引渡しを希望する時期から逆算して、できるだけ余裕をもったスケジュールにしましょう。
マンション売却スタートまでの準備
第1段階として売却を決めてから販売を開始するまでの準備期間があります。最低でも1カ月程度の余裕をもってしっかり準備をすすめましょう。
STEP1:必要書類の準備、相場の把握
マンションを売却するためにまずすべきことは「物件に関する情報を準備」と「相場を把握する」ことです。
売却に必要な書類・物件資料の準備
不動産会社が手配するものもありますが、まず保有している資料をすべて準備しましょう。
特に、物件資料は販売戦略や広告にも影響する可能性があります。
必要書類 | 入手先 |
---|---|
本人確認資料(運転免許証等) | 本人 |
実印 | 本人 |
印鑑証明書 | 市区役所 |
住民票 | 市区役所 |
権利証・登記識別情報 | 本人 |
固定資産税納税通知書 固定資産税評価証明書 | 本人 市区役所 |
登記簿謄本 | 法務局 |
売買契約書・重要事項説明(購入時) | 本人 |
購入時の販売図面 | 本人 |
管理規約・使用細則 総会議事録 | 本人 管理会社 |
物件のパンフレット | 本人 |
設備等の仕様書 | 本人 |
建築設計図書 | 管理組合 |
リフォーム履歴等確認できるもの | 本人 |
住宅性能評価書・耐震診断報告書(あれば) | 本人 管理組合 |
ローン残高証明書・返済償還表 (住宅ローン返済中) | 本人 借入先金融機関 |
銀行通帳 | 本人 |
中古マンション価格の相場を調べる
相場を把握するといってもどうやって調べればいいの?
正確な相場や査定金額は不動産会社に査定を依頼した際にしっかりと確認すれば良いです。
ここで大切なことは、売主として自分のマンションと条件が近い物件がどれくらいの価格で取引されているかを知ることです。
売却後の資金計画が明確になり、不動産会社との交渉がしやすくなります。
- 不動産ポータルサイト(suumo、at home等)
- レインズマーケットインフォメーション
- 土地総合情報システム(国土交通省)
このうち不動産ポータルサイトの価格は、あくまでも販売中の売出価格です。
実際の成約価格は、価格交渉等で変わりますのでその点は考慮してください。
STEP2:査定依頼
物件資料と相場をある程度把握できれば、不動産会社に査定を依頼しましょう。
ここでのポイントは、
査定結果は不動産会社によって違うということです。
なぜ不動産会社によって査定価格が違うの?
査定結果が不動産会社によって違う理由は大きく2つあります。
・査定の仕方が違う
・営業戦略の違い
査定の仕方や精度が違う
マンションの査定では一般的に取引事例比較法が使われます。
取引事例比較法
査定するマンションと条件の近いマンションの取引事例と比較して価格を算出する方法
査定する不動産会社や担当者によって、比較対象のマンションや数などが違うと査定結果が違ってきます。
また、物件の状態や周辺環境の違いなど個別要因をどれくらいプラス要素、マイナス要素と考えるかで査定金額は変わります。
営業戦略の違い
不動産会社は売却の依頼を獲得することが目的です。
そのため営業方針によって、相場とは異なる査定金額が出ます。
売主はできるだけ高く売却したいと思っていますので、相場とかけ離れた査定金額を提示する会社もあります。
大切なことは、複数の不動産会社の査定金額や算出根拠を比較、検討することです。
また、同時に不動産会社の販売方法や担当者の対応も比較して決めましょう。
担当者とは、売却が終わるまで長い付き合いになります。その間、販売状況の報告を受けたり相談することもあります。
提案内容、対応などが信頼できる不動産会社選びが成功の第1条件です。
高値売却を狙うにしても、まず相場(市場価格)を知ることが大切です。
・相場よりどれくらいの高値で
・どれくらいの期間をかけて
・どういった方法で広告・販売するか
総合的に比較検討しましょう。
STEP3:不動産会社を決め媒介契約締結
依頼する不動産会社が決きまれば媒介契約を結びます。そして、販売活動に入るための物件調査や物件状況報告書(告知書)の作成が行われます。
媒介契約締結
媒介契約とは、
不動産を売却するにあたり、販売活動の方法や条件、成約時の報酬や支払い時期などを明確にし、不動産会社とのトラブルを防止するため義務付けられているもの。
媒介契約には3つの種類があります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
媒介契約はどれにすべき?
3種類の媒介契約の違いは以下のような点です。
- 依頼できる不動産会社の数
- 媒介契約期間
- 自己発見取引の可否
- レインズ登録義務
- 業務状況の報告義務
どの媒介契約にするかは、以下の点を考慮して決める必要があります。
- 物件の売れやすさ
- 売主の意向・かけられる手間
- それぞれのメリット・デメリット
まずは不動産会社にそれぞれの特徴を説明してもらい、しっかりと理解した上で契約を結ぶことが大切です。
不動産会社による物件調査
媒介契約を締結すると不動産会社は販売活動の資料、重要事項説明作成のため物件調査を行います。
- 現地調査
- 役所調査
- 法務局調査
- インフラ調査(電気・ガス等)
現地調査では売主からのヒアリングとともに物件写真の撮影なども行われます。
物件状況報告書(告知書)と付帯設備表の作成
建物や設備の状態や不具合箇所、周辺環境、事件事故などを売主からヒアリングし、物件状況報告書(告知書)と付帯設備表を作成します。
物件状況報告書は、建物の状態や周辺環境、事故や事件などについて、売主が把握している事実を買主に伝えるために作成します。
付帯設備表は、建物の設備とその状態、引き渡す設備などを明確にするものです。
いずれも、売買契約上の契約不適合責任の範囲に影響してくる重要な書類となります。
契約不適合責任(民法第562条~564条)
契約の目的物の種類、数量、品質について契約内容と相違があった場合に、売主が買主に対して負う法的責任。
中古マンションの販売活動
不動産会社が決まり、媒介契約を締結するといよいよ販売活動がスタートします。
一般的には、3カ月程度で売却できると考えられる価格設定をしますが、販売期間は成約価格にも影響しますのでできるだけ余裕をもつようにしましょう。
STEP4:販売活動開始
不動産会社によって広告を掲載する媒体やチラシ配布など販売方法に違いがあります。
- レインズの登録
- 不動産ポータルサイトへ掲載
- 自社ホームページへ掲載
- チラシ配布
- SNS活用
どの媒体を使って集客するかも大切ですが、物件の強みやポイントをしっかり打ち出す物件資料や掲載内容になっているかを確認しましょう。
STEP5:マンション売却中の内覧対応
販売活動が始まると問い合わせや内覧希望がきます。
居住中の物件であれば、内覧時間の調整から内覧対応が必要となります。
内覧時間はできるだけ購入検討者に合わせることが必要です。
内覧数は物件の需要によって異なりますが、販売機会を無駄にしないためにも内覧可能な日時、曜日、時間帯などはできるだけ広くもうけましょう。
また、内覧時の対応として、部屋の片付けや掃除、照明や風通しなどをしっかりと準備しましょう。
内覧中に購入検討者から質問を受ける場合もあります。周辺環境や生活環境について情報提供できれば、買主さんも購入判断がしやすくなります。
STEP6:マンション購入申込書の対応
購入希望者が現れると不動産購入申込書を書面で受け取ります。
不動産購入申込
買主が希望する購入価格や契約時期、条件を示した正式な購入の意思表示
売買契約のような法的な拘束力はありませんが、不動産という大きな取引をするうえで、買い主と売主の購入意思、取引条件を確認するための手続きです。
このとき購入希望者から価格交渉が入る場合があります。
価格交渉に応じるか否か、違う条件を提示するなど選択肢はありますが、最終的に取引条件で合意すれば売買契約にすすみます。
売買契約締結から引渡し
最後の段階として、売買契約から引渡しまでがあります。
契約から引渡しまで一般的には1カ月程度で設定することが多いですが、売主、買主双方の希望で調整することもあります。
STEP7:売買契約締結
買主と取引条件で合意すれば売買契約を締結。
手付金として売買代金の5~10%を受領し、契約書に署名捺印します。
このとき売買契約に先立って、買主に重要事項説明が行われます。
重要事項説明
不動産という大きな取引において、契約に関する重要な事項をあらかじめ買主に説明したうえで売買契約を結ぶことでトラブルや紛争を防止するものです。
(宅地建物取引業35条)
また、売主が作成した物件状況報告書(告知書)や付帯設備表もあわせて説明されます。
- 本人確認書類(運転免許証等)
- 権利証・登記識別情報
- 実印
- 収入印紙(売買契約書貼付用)
- 仲介手数料半金(不動産会社による)
STEP8:引渡し準備
売買契約が無事終われば、引渡しに向けて準備をしましょう。
- 引越し準備
- 管理会社(管理組合)への連絡
- 金融機関への連絡(ローン残債ありの場合)
- 引渡しするものの準備
管理会社(もしくは管理事務所)に引渡し日を伝えることで区分所有者が変更する旨を伝えます。
また、住宅ローンがある場合は、引渡し日が決まれば速やかに、金融機関へ抵当権抹消の手続きをすすめてもらうよう連絡をいれましょう。
売買契約後、住宅ローンを利用する買主は、売買契約書で取り決めた融資期限までに住宅ローン本審査を通し、住宅ローンの契約手続きを行います。
STEP9:決済・引渡し
マンション売却手続きの最終日に残代金の決済と引渡しが行われます。
- 売買代金の残代金の受領
- 固定資産税・都市計画税の精算
- 管理費、修繕積立金等の精算
- 登記費用支払い(司法書士)
- 仲介手数料支払い(不動産会社)
売主と買主、不動産会社、司法書士が一同に会し、必要書類の確認、決済金額の振込。鍵渡し、所有権移転登記手続きを一般的には同日中に行います。
- 本人確認書類(運転免許証等)
- 権利証・登記識別情報
- 実印
- 印鑑証明書
- 引渡しするもの(鍵、カード等)
- ローン残高証明書・抵当権抹消書類
- 銀行通帳
- 仲介手数料半金(不動産会社による)
引渡し日を基準に所有権が売主から買主に移転します。
住宅ローンの残債がある場合は、売却代金で住宅ローンを完済し抵当権抹消の手続きをします。
STEP10:マンション売却後の確定申告(利益が出た場合)
マンションの売却で利益が出た場合は、売却した翌年の2月16日〜3月15日の間に確定申告が必要となります。
不動産売却時の特例によって税金がかからない場合でも確定申告は必要です。
まとめ
中古マンション売却の流れを解説しました。
- 必要書類の準備・相場確認
- 査定依頼
- 不動産会社と媒介契約締結
- 販売活動開始
- 内覧対応
- 不動産購入申込
- 売買契約締結
- 引渡し・引越し準備
- 決済・引渡し
- 確定申告
マンション売却の手続きにかかる期間は、物件の需要(売れやすさ)や販売状況によっても変わります。
マンション売却は不動産会社と一緒にすすめていきますが、高く売却したいのであれば、不動産会社任せではなく売主として情報収集や行動が必要です。
是非参考にしてください。