はじめに

マンションを売却する方法として「仲介」と「買取」があります。

「できるだけ高く売りたい」
「確実に売りたい」
「早く売りたい」

状況にあわせた売り方を考える必要があります。

この記事では、不動産を売る方法を間違わないための知識と注意点をお伝えします。

この記事でわかること

・仲介と買取の違い

・仲介と買取のメリット・デメリット

・仲介と買取どっちがいい?価格差は?

・買取の注意点

仲介と買取の違いを知り、より高くより確実にマンションを売却するための参考にしてください。

仲介と媒介の違い

マンションの仲介と買取比較
図表1

不動産仲介と買取の違いは、買主が一般の個人か買取業者かということです。

また、買取には「即時買取」「買取保証」があります。

仲介とは

仲介
 不動産会社が売主と買主の間に入り不動産売買を成立させる方法です。
 「媒介」ともいいますが意味はほとんど同じです。

不動産会社と売却を依頼するための媒介契約を結び、不動産会社が買主を集客、契約、引渡しまでをサポートします。

媒介契約には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類があり、依頼する不動産会社の数やレインズの登録義務、販売状況の報告義務などに違いがあります。

買取とは

即時買取

「即時買取」
買取業者や不動産会社が買取金額を査定し、売主から直接買い取る方法

仲介と異なり、買主を探す必要がなく金額などで合意できれば早く売却できます。

買取保証

買取保証
不動産会社の仲介で一定期間売却をすすめ、その間に購入希望者が現れない場合に、あらかじめ合意した金額で不動産会社が買取を保証する方法

仲介と買取をあわせた仕組みで、仲介で一定期間販売ができるとともに、買主がみつからない場合の買取が保証される方法です。

マンション仲介と買取の流れ

不動産の仲介と買取の流れ
図表2

マンションの仲介と即時買取、買取保証の流れをまとめたものが図表2です。

仲介は、不動産会社と媒介契約を締結し、一般個人への販売活動で売却を目指す方法。

即時買取は、不動産会社と直接売買契約を締結、買取する方法。媒介契約も販売活動もありません。

買取保証は、一定期間販売活動で売却を目指し、できない場合に不動産会社と売買契約を締結し買取する方法。

不動産仲介のメリット・デメリット

仲介と買取、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

仲介のメリット

仲介のメリットは、買取より売却収入が高くなることです。

売り出し価格を決めるにしても、相場や査定金額を基準として価格設定の自由度が高く、市場や金利状況で高値での売却を狙うこともできます。

不特定多数の一般の買主を対象としますので、物件の条件に合う購入希望者が1人でもみつかれば相場より高く売却できることもあります。

仲介のデメリット

時間がかかる

仲介は、売却開始から決済、引渡しに至るまで一定の時間がかかります。

一般的には3カ月を目安として売却できる金額を設定し販売活動をしますが、販売開始までの準備、購入希望者が見つかって売買契約から引渡しに至るまでの期間をあわせると5~6カ月の期間は見ておかなければなりません。

販売期間が長引けば、1年以上売れないこともあります。
時間がかかる要因は、「物件自体に問題がある」「立地的に需要が少ない」「価格設定が高すぎる」などが考えられます。

仲介手数料がかかる

仲介の場合、売買契約成立、引渡しまでの報酬として不動産会社に仲介手数料が必要となります。
仲介手数料がかからない買取と比べ諸費用が増えます。

但し、仲介手数料だけで仲介か買取かを判断はできません。
仲介手数料の負担以上に買取より高く売れる可能性もあるからです。

内覧など準備や手間がかかる

仲介で販売活動をするなかで、特に居住中の物件の場合、内覧時の対応やそのための掃除や片付けなど準備と手間がかかります。
土日などの休みを利用してマイホームを探される方も多く、そのための時間を調整する必要もあります。

契約不適合責任を負う

仲介の場合、契約不適合責任を負います。

契約不適合責任
あらかじめ対象となる物件に関して取り決めた種類や品質、数量に相違があった場合に、売主が買主に負う法的責任です。

例えば、マンションに雨漏れや建物の欠陥があった場合、それが契約内容に含まれていなければ、修理の対応や損害賠償責任を負う場合があります。

ただし、契約内容によっては、契約不適合責任を負わないという特約をする場合もあります。

不動産買取のメリット・デメリット

次に買取のメリット・デメリットについてです。

買取のメリット

現金化まで早い

買取の最大のメリットは、現金化までのスピードが早いことです。

一般的に仲介の場合、現金化できるまでに3〜6カ月間以上の時間を要するところ、買取の場合、早ければ2週間、遅くても2カ月以内には現金化できます。

契約後も一般の買主に売却する仲介と比べ契約解除などのリスクは少なく、取引が完了するまでの確実性は高いといえます。

仲介手数料がかからない

買取の場合、不動産会社や買取業者が直接買取りますので仲介手数料はかかりません。

また、買取は、買取後にリフォームをして再販売することが前提です。
ですので、売却前のハウスクリーニングやリフォームも不要です。
仲介と比べると諸費用をおさえることができます。

契約不適合責任を負わない

仲介で紹介した「契約不適合責任」は、買取の場合、問われないことが一般的です。

買主が一般の個人ではなく、不動産会社や買取業者といったプロであることから、設備や建物の状態に不具合箇所があっても、その点も踏まえた買取金額のもと契約不適合責任を負わないことが一般的です。

近所に知られずに売却できる

買取では、売却のための広告も内覧もありません。

ですので、ネットで広く情報を拡散して集客する仲介と異なり、近所に知られずに売却しやすいといえます。

買取のデメリット

売却価格が安い

買取のもっとも大きなデメリットは売却価格が低くなることです。
物件によって異なりますが、相場(市場価格)の6~8割での買取金額になります。

買取業者や不動産会社は、買い取った不動産をリフォームやリノベーションをし、再度販売することを前提としています。

ですので、物件をできるだけ安く仕入れ、リフォームにかかる費用、買取・再販売時にかかる諸費用を踏まえて利益を出す必要があります。

そのため、買取は仲介と比べて売却価格は低くなります。

買取保証のメリットデメリット

買取保証のメリット

買取保証のメリットは、一定期間の売却活動で相場に近い金額で売れる可能性もありながら、結果的に売れない場合でも買取が保証されている点です。

できるだけ高く売却したい一方で、かけられる時間には限りがある場合には利用価値が大きいといえます。

住み替えで時間がない場合でも、売却期限や最終の買取金額が保証されているため、新居の資金計画はたてやすいです。

買取保証のデメリット

仲介での売却期間で売れなければ、買取と同様に売却収入が低くなる点です。

結果的に、一定期間、仲介で販売活動を行い時間と労力がかかったにもかかわらず、最終的には低い買取金額での売却になる可能性があります。

仲介と買取どっちがいい?価格差は?

仲介と買取それぞれのメリット・デメリットを解説しましたが、どういった場合に仲介か買取かを判断すればよいのでしょうか。

仲介買取
売却収入相場がベース相場の6~8割
期間5カ月~2週間~1カ月
仲介手数料必要不要
契約不適合
責任
あり
(※契約による)
なし
内覧などの
準備・手間
あり少ない
図表3

例)相場2,800万円のマンション
  仲介と買取の価格差

市場価格の6〜8割と仲介より売却価格が低くなる買取ですが、どれくらいの価格差になるのでしょうか。

相場が2,800万円のマンションでシミュレーションしてみました。

仲介と買取の価格差

●仲介の場合(相場通りに売却)
 売却収入:2,800万円
 仲介手数料:100万円(概算)
 手取り収入:2,700万円

●買取の場合(相場の7割で買取)
 売却収入:1,960万円
 仲介手数料:0円
 手取り収入:1,960万円

●仲介と買取の差
 2,700-1,960=740万円

※仲介手数料以外の諸費用は考慮していません

仲介手数料や時間、手間がかかるとしても、仲介と買取では売却収入の差は大きいです。

仲介がすすめやすいケース

どういった場合に仲介あるいは買取を検討すべきかを解説します。

立地条件が良い

不動産の立地条件は、需要や価値に大きく影響します。
駅近、ターミナル駅、複数沿線利用可能など立地条件が良く需要が高いマンションでは高値売却も狙うこともできます。

何か特段の事情がある場合をのぞき、あえて買取で売却する意味はありません。

時間をかけても高く売りたい

時間をかけてでも高く売りたい場合も仲介がおすすめです。
仲介での売却は、物件次第では時間がかかることもあります。

ただ、時間をかけることができれば、年間で売却しやすい時期もあり、不特定多数の購入検討者に広く情報を拡散するなかで、1人でも購入希望者が現れれば買取以上の価格で売却が狙えます。

築浅の物件

中古マンションのうち築浅の物件は売りに出される数は多くないため、それだけで希少性があるともいえます。

また、一般的には、築浅の物件を希望する購入者が多く、経年による劣化や不具合などが少なく購入判断がしやすいことを考えると、あえて買取で売却する必要はありません。

買取がおすすめしやすケース

家をできるだけ早く売りたい

「住み替えで購入物件が決まっている」
「急な転勤で遠方に行くことが決まった」
「離婚で早く財産分与を終わらせたい」

できるだけ早く、確実に売りたい場合、買取が検討しやすくなります。

立地が悪く需要が少ない

立地条件が悪くそもそも需要が少ないマンションを売却するとなると、販売期間が長引く、売却の見通しがたたない状況も考えられます。

売却期間が長引けば、固定資産税や維持費などの負担も増えます。
一般の個人への売却見通しがもてず、次の生活を早く始めたい場合など、買取を検討してもよいでしょう。

近所に知られず早く売りたい

買取の場合、広告活動や内覧もないため、近所に知られずに売却をすすめることができます。
近所に知られずに早く終わらせたい場合、買取を検討するのもよいでしょう。

この点、仲介でも広告を掲載せずに販売活動を行うことも考えられますが、販売期間は長くなる可能性は高まります。

築年が経過している

一般的には、築年がかなり経過しているマンションだと、建物や設備の劣化や維持管理費の高さなどから、販売期間が長期化し売れない可能性が高くなりますので買取を検討してもよいでしょう。

ただし、立地条件が良いマンションなどであれば、築年が経過していても仲介で売れる可能性はあります。
築年数だけで一概に判断はできません。

欠陥や事故など問題がある

雨漏れや建物の亀裂などの欠陥や過去に事件、事故の経歴がある物件は、他の条件がよくてもなかなか売れないことが考えられます。

この点、建物の欠陥や不具合箇所は、買取業者が改修して販売することができます。

買取価格と契約条件で合意できれば、契約不適合責任を負わずに売却できる買取はメリットがあるといえます。

買取の注意点

不動産業者に直接買い取ってもらう買取。どういった点に注意すればよいのでしょうか。

住宅ローンを完済できるか

住宅ローン返済中でも買取を活用することはできます。
ただし、ローンを完済して金融機関が設定している抵当権を抹消する必要があります。

買取の場合、仲介より売却価格が下がりますので、住宅ローンを完済できるか、できない場合不足分をどうするかなどの資金計画には注意しましょう。

買取価格が低すぎる

市場価格より低くなるとしても、あまりにも低すぎる買取金額になっていないか注意が必要です。

個々の物件の状況にもよりますが、複数の買取業者や不動産会社に買取金額を査定してもらうなど、1社の買取価格で判断することは避けましょう。

また、一括査定など複数の会社が競合する場合、営業段階で提示された買取金額が、いざ契約の段階で下げられる等のケースにも注意が必要です。

(買取保証の場合)売却活動に積極的でない

買取保証の場合、あらかじめ取り決めた期間の間に売れなければ、買取で確実に売却できる点がメリットです。

ただ、不動産会社の担当者が積極的な売却活動をしているかどうか注意が必要です。

仲介で売れなくても買取できる、買取のほうが不動産会社にとってメリットが大きいという判断の場合、積極的な販売活動が期待できない可能性もあります。

不要な費用を請求される

買取では仲介手数料がかかりませんが、不用品などの処分費用の名目で費用を請求されるなどには注意しましょう。

あらかじめ買取価格の査定段階で照明やエアコンなど残置物の処分をどうするか、査定金額に処分費用が含まれるか、引渡し後の請求はないかなどを、しっかりと確認しましょう。

契約内容に注意(契約不適合責任など)

買取では一般的に契約不適合責任は負わないとお伝えしましたが、売買契約書のなかで契約不適合責任の免責条項が含まれているかをしっかりと確認しておきましょう。

売却価格の相場を把握し、まずは仲介から検討しよう

仲介あるいは買取どちらで売却するにしても、大切なことはマンションの相場を把握することです。

仲介では相場(市場価格)に近い売却価格で、一定の時間や内覧などの手間をかけて販売活動をしていく、一方、買取では市場価格の6〜8割程度の価格で短期間に売却していくことになります。

相場を把握することで、それぞれいくらで売却できるかを踏まえたうえで、物件の需要やかけられる時間、1人1人の状況にあわせて、仲介と買取、何がベストか判断しましょう。

まずは仲介でどれくらいの価格と時間で売却ができるかを検討し、難しい場合、あるいは時間や状況次第で買取を検討していく流れをおすすめします。

自分で相場を調べる方法

一括査定など複数の不動産会社に訪問査定してもらうことでより精度の高い相場を知ることができます。

まとめ

不動産売却における仲介と買取の違いについて解説しました。

仲介のメリット・デメリット

メリット
 売却金額が高い

デメリット
・時間がかかる
・仲介手数料がかかる
・内覧など準備や手間がかかる
・契約不適合責任を負う

買取のメリット・デメリット

メリット
・現金化まで早い
・仲介手数料がかからない
・契約不適合責任を負わない
・近所にしられず売却できる

デメリット
・売却金額が安い

買取保証のメリット・デメリット

メリット
 相場に近い金額での売却の可能性もありながら、売れない場合でも買取が保証される

デメリット
 売却金額が安い

仲介と買取どっちがいい?

仲介がおすすめしやすいケース
・立地条件が良い
・時間をかけても高く売りたい
・築浅の物件

買取がおすすめしやすいケース
・できるだけ早く売りたい
・立地が悪く需要が少ない
・近所に知られず早く売りたい
・築年が経過している
・欠陥や事故などの問題がある

買取の注意点

・住宅ローンを完済できるか
・買取価格が低すぎる
・(買取保証)売却活動に積極的でない
・不要な費用を請求される
・契約内容に注意

参考にしてみてください。